なかちゃんの考えるマルチアンプシステムについて

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その3

その2.5

その2

その1

その4

その3で揃えたシステムでようやくマルチアンプらしい音になったなかちゃんシステム。これは良いなどと思いながら暫く楽しんでいたのだが、プリアンプにACCUPHASE C280を導入してから約2年程経った頃、音楽を聴いていてどうも釈然としない感覚が自分の中に芽生え始めてきた。
最初、これは一体なんなんだろうと思いながら聴いていたのだが、ある時ふと気づいたのだった。

「これ、音のヌケが悪い・・・」

そう、なんだかよそよそしく聴こえるというか音が前へ出てこない事に気づいたのである。
一体何が原因なんだろうと考えたがすぐにはわからなかった。
たまたまCDプレーヤーにアッテネーター(ボリューム)が付いていたので試しにプリアンプを外してCDプレーヤーをチャンネルディバイダーに直接繋いで聴いてみた。

「エエッ!?」

何と、音のヌケが俄然良くなった。
まさか、ACCUPHASE C280が原因なのか?気に入って使っていたので少なからずショックを受けたが、一度そう思ってしまうともうどうしようもない。
但し、一言断っておくと音のヌケは良くなったが音楽の情報量はガタ落ちである。プリアンプの持つ意味は大きく90年代前半に一時的に流行ったパワーアンプダイレクトはなかちゃんにとって音楽の空間表現を感じ取れないお馬鹿な評論家の戯言に過ぎなかった。しかし、そのためにプリアンプの必要性がわからなくなってしまった人も多く、パワーアンプダイレクトを雑誌などが良いと取り上げる度に腹立たしい思いをした。
もっとも、繋ぐとシステムの音が悪くなる、「プリアンプ」と称した酷い製品も多かったが。
もちろん勤めていたオーディオショップでなかちゃんはお客様に「パワーンプダイレクトは絶対にしてはいけないと散々伝えた。聞いてくれたお客様は半分程度だったが。
(パワーアンプダイレクトなんかクソくらいだ!!!←なかちゃんの叫び)

そして、暴挙に出た・・・・・・・

当時ACCUPHASE C280と並び称されていたSANSUI C2301VINTAGEとEXCLUSIVE C5という当時の国産最高峰のプリアンプ2台を購入したのである。もちろん経済力がそれ程ある訳もなく、どちらも中古品を探しての購入であった。

目の前にあのC280とC2301VINTAGEとC5が3台並んでいる。
はやる気持ちを抑えつつ、まずC280を繋いで聴いてみる。

「いつもの音だ。」(そりゃぁそうでしょう)

次にC280とSANSUI C2301VINTAGEを繋ぎ換えて同じ曲をかけてみる。

「こっ、これは!!!!! 全く違うじゃないか!」(驚)

C280に比べて音のヌケが断然良い!更に質感、情報量共こちらの方が良く感じられた。
どちらも国産最高峰、どうしてこれ程違うのか。この事実に少しの間戸惑った。
もう一度C280に戻して聴いてみる。

やはり音のヌケがあまり感じられなくなる。C280は非常に端正で折り目正しいというか、背広をビシツと着こなしたビジネスマンとでも言おうか、決して羽目を外す事がない。ちょっとお堅いイメージなのである。
それは悪い事だとは思わないのだが、困った事にノリの良いジャズやロック系の音楽を聴いている時でも、演奏者がスーツ姿で直立不動のままクソ真面目に演奏しているのである。
ジャズがスイングしない。ロックから魂の叫びが聴こえてこない・・・

もう一度C2301VINTAGEに換えて聴いてみた。

ジャズはスイングしロックからは魂の叫びが聴こえる。
やはりこの違いは間違いじゃない。そう思った。勝負ありだと思った。

次にEXCLUSIVE C5を繋いで聴いてみた。

「ムムッ、これもいいじゃないか」

音の出方が非常に自然である。質感、情報量も申し分無く、また帯域バランスも非常に良い。
いい意味でフラットバランスなのである。音にクセも感じられない。

この時点でC280を手放す事を決意。実に他のプリアンプ2台と比較してすぐの決断であった。

まさか2年程愛用していたC280をこんな形で手放す事になるとは思っていなかったが、他の2台を無理して購入しただけに、これを手放さないと経済的に全く余裕が無い。

C280は写っていないが、左下のシルバーのアンプが
EXCLUSIVE C5 右上のブラックのアンプがSANSUI C2301VINTAGE
我ながらなんとも贅沢な光景である。

さて、そうなると問題はC2301VINTAGEとC5のどちらを選ぶかである。
C2301VINTAGEは実に聴かせる音作りであり、ボーカルの質感がすごく良く音に潤いが感じられる。非常に魅力的である。特に女性ボーカルなどは絶品と思える程である。これは素晴らしい。

対してC5である。フラットなバランスでどこといっておかしなところも感じられない。
C2301VINTAGEに比べてスッキリとしていてクリアーな印象である。これはC2301VINTAGEで決まりかなと思ったのだが
不思議とこのC5は聴けば聴く程何かが心に響いてくる。

これは何だろうと思いながら、決断出来ずに2ヶ月が過ぎた。

決めた。C5を残そう。

C2301VINTAGEの魅力に感じ入りながらも、何故C5を選んだのか。
C2301VINTAGEは確かに魅力的で感じるものがある音である。しかしボーカルは良いのだがバックの演奏とボーカルの対比に少し違和感が感じられた。
クラシックなどでもそうなのだが、メインの音(ボーカルやソロ楽器)にスポットを当てた様な印象で伴奏が少し小ぢんまりと聴こえてくるのである。トータルとして楽曲のバランスに少し違和感を感じてしまう。
C5はそのあたりのバランスも非常に良く全く違和感がない。

C2301VINAGEがとても美味しい味付けがされた料理だとするとC5は味付け前の素晴らしい食材とでも言おうか。
今後、自分の求める音作りをしていく上でC2301VINTAGEの良さがかえって足枷になってしまうと感じたのである。
その点C5はやり方次第でどの様な音にもなり得るだろうと感じた。

そしてC2301VINTAGEもなかちゃんのもとを去っていくのである。
苦渋の決断だった。

SANSUI C2301VINTAGE
その潤い感豊かな音質は魅力的。
ガラス張りフロントパネルの美しさも絶品である。

EXCLUSIVE C5
シンプルなデザインのシルバーパネルにローズウッド製のケースが高級感を醸し出すC5。
音質は癖がなく素直で非常に良く練られた設計を窺わせる。

SANSUI C2301VINTAGE

C2301VINTAGE内部構造

EXCLUSIVE C5

C5内部構造

こうしてなかちゃんのプリアンプはEXCLUSIVE C5に落ち着いた。

この時、既にC5の後継モデルとなるEXCLUSIVE C7が発売されていたのだが120万円というその価格になかちゃんは手も足も出ない。でも1世代前のモデルとはいえその時の最高級モデル(一時は3台も)を所有する喜びみたいなものを感じていた。

ちょうどその頃、低域用に使っていたパワーアンプPIONEER M-90aの調子が悪くなり・・・というか壊れた(ガクッ)
M-90aはB2103MOS VINTAGEやP-102に比べると音質的にワンランク劣る印象があったので、内部を結構いじり倒していた。そのため基盤のパターンが浮いてしまったりなど何度か修理に出したり、基盤ごと交換したこともあったが、遂になかちゃんの酷な使い方に音を上げてしまったのだろう。(M-90aちゃん、ごめんなさい)

しかし、タイミングが良いというのか、その後すぐなかちゃんの勤めているオーディオショップにACCUPHASEのM-60というモノラルパワーアンプの中古品が入荷してきた。C-280での事もあり最初はあまり感心を持たなかったのだが、実際に試聴してみて「あれっ」と思った。C-280の時に感じたヌケの悪さがあまり感じられない。それにモノラルアンプの良さか価格帯がなかちゃん所有のパワーアンプよりも上級グレードのものであるせいか、なかちゃんの使っているパワーアンプより明らかに音質が良かったのである。
それに年式が古い事もあり販売価格もかなり手頃なものだった。

買ってしまった。(店員が買ってしまって、お客様ごめんなさい)

早速持って帰ってモニター用に使っていたPIONEER S-101CUSTOMというスピーカーに繋いで鳴らしてみた。

「良いではないか。エヘヘヘヘ」

ちょっと頬が綻んだかもしれない。
音場のスケール感も他の所有アンプよりあったので低域用に使おうと考え、M-90aの受け持っていた低域に繋いでみた。

「おお〜っ、良いではないか〜」

M-60の音質はやや緩い印象はあるものの、自然な音色感で中域に使っていたB2103MOS VINTAGEとの繋がりにも違和感はあまりなかった。寧ろM-60の受け持つ低域だけが他の帯域より音質が良く感じられ少しバランスを崩してしまった感は否めないが・・・。

ACCUPHASE M-60

M-60内部構造

ACCUPHASE M-60
なかちゃんにとって初めてのモノラルパワーアンプ 1台で一つのスピーカーを鳴らすアンプなのでステレオ再生では2台1組となる。
このアンプがモノラルパワーアンプのゆとりある再生音をなかちゃんに教えてくれた。

そうなると他のパワーアンプももっと良くしたくなるのが人情というもの。(なんと身勝手な屁理屈)
我慢出来ない。M-60購入から暫くして店に入荷したEXCLUSIVE M4aを購入した。(お客様 ごめんなさい)
この時、ACCUPHASE P-102が下取りに出された。

EXCLUSIVE M4aもまずPIONEER S-101CUSTOMに繋げて聴いてみた。

良い。非常に良い。

色彩感豊かなその濃密な音質はすぐになかちゃんの気に入るところとなった。
いい感じだったので暫くこのままM4aの音を楽しんだ後、いよいよマルチアンプシステムに組み込む事になる。

M4aのこの濃くて色彩感溢れる音質はもちろん中音域に使わなければとなかちゃんは確信していた。
が、しかし・・・・・・・

予期せぬ事態が起こったのだ。

M4aを中音域に繋いで鳴らしてみたのだが、音が引っ込む。全然前に出てこないのである。

「あれっ どうなってんだ」

なかちゃんは不思議に思った。これだけで聴いていればそんな事は全くなかったのだが。
エージング(鳴らし込みの事)が必要かなと思い暫く我慢してその音で聴いていた。
1週間が経った頃

「これは変わらんなぁ」

と悟った。どんなオーディオ機器にもエージングは必要だが1週間もすれば、その変化の方向性ぐらいは見えてくる。しかし今回はその兆候すら全くないのである。

M4aを中音域に使うのは諦めて、今度は低音域用のM-60と入れ替えてみた。

「うわぁ〜  もっと酷い!」

音が完全に詰まっている。中音域の時よりもっと引っ込んだ感じでもぞもぞした印象だ。
仮にエージングで変わったとしても、それで使い物になるレベルではない。

正直あせった。単体ではACCUPHASE P-102をはるかに凌ぐ表現力を持っているのに、マルチアンプシステムで使うとどうにも出来ない。尤も、他のアンプが同系統のものなら素晴らしい結果が出たのかも知れないが。

しかし気にったアンプだし手に入れたばかりなのでなんとかしたい。
最後に高音域に繋いでみた。

「おおっ、いけるじゃん」

今度は音が引っ込む事なくちゃんとヌケてくる。そして緻密な音である。

「よーし! OK!」

となったが、なんだこの耳に刺さる様な鋭さは。
まるでツィーターから針が飛んでくる様な鋭さである。
あの温かみがあって色彩感豊かなM4aがどうして・・・・・
この時なかちゃんは知ったのだ、アンプによっては単体で聴いていた時の良さがマルチアンプシステムに組み込むと必ずしも発揮されるとは限らないという事を。

なんとも奥深い事か・・・

でも、マルチアンプを始めた頃に比べれば遥かに音は良くなっている。

PIONEER S-101CUSTOM

PIONEER S-101CUSTOM
実はコノスピーカーは昔ONKYO D-77XDと同時にサラウンドのセンター用として購入していたもの。
当時はこの小型2WAYスピーカーがD-77XDより良い音に聴こえるのが不思議だったが
そのせいもあってかずっと手放せなくて持っていたものである。素直な音質と引っ掛かりのないスムーズな音の出方で今思えばすごく良く出来たスピーカーであった。独自のミッドシップマウント方式も音質に非常に効いていたと思う。

S-101CUSTOM内部構造

EXCLUSIVE M4a

EXCLUSIVE M4a
プリアンプのC5と同じくローズウッドのケースに収まったメーターのみのパネルデザインは高級感満点である。パワースイッチなどはフロントパネル下部のシーリングパネル内に収まっている。
なかちゃん初の純A級アンプ。天板に空いた放熱孔の上では本当に目玉焼きが焼けると思う。手で触ったら1秒と触っていられない。「熱っ」となるのである。

今回も話が長くなってしまいました。前回申し上げた衝撃の出来事(まあ、心を奪われたアンプとの出会いとでもでも言っておきます)までまだ暫く時間が掛かります。次回でもそこまで話が進まないかも知れません。
しかし、この時点でなかちゃんはまだ20代後半。(前回から歳取ってないんじゃぁという声も聞こえてきそうですが(^^ゞ )どんだけ濃いオーディオライフと言うか、どれだけオーディオと格闘しているんだろうと今更ながらに思う。
もっと短く終わると思っていましたが、まだまだ続きます。
こうなったら、端折らず出来るだけ細かく書いていきたいと思います。
次回その5にもご期待(?)下さい。

その5へ続く